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2020年7月13日お知らせ消費者向け

[2020年4月~5月]
新型コロナウイルスに関連した広告へのご意見

はじめに

JAROには、新型コロナウイルス感染症やそれに伴う自粛、新しい生活様式などに関連したご意見が1月末ごろから寄せられている。5月7日に公表した[1~3月]に続き、今回[4~5月]を取りまとめた。

【抽出方法】
 キーワードにて、新型コロナウイルス感染症およびその関連事項(外出自粛、3密、マスク、除菌など)を含むご意見を抽出した。

【対象のご意見】
 本レポートで対象としたご意見は下記のようなものである。本レポートでは「関連ご意見」というが、JARO統計上は「苦情」に含まれる。
 ・新型コロナウイルスやそれに類する用語(ウイルス、新型肺炎、コロナなど)を明示・暗示した広告に関するもの。
 ・新型コロナウイルス感染症への対策等に供すると思われる商品・サービス(マスク、除菌剤など)に関するもの。
 ・新型コロナウイルスに関する表示・表現はないが、感染症による環境変化などにより、広告への意見を述べるもの。

4~5月期の社会状況と行政の対応

4~5月は、新型コロナウイルス感染症の拡大により、緊急事態宣言による社会活動の自粛期間に当たる。2月にはすでに、マスクや消毒用アルコールの需給がひっ迫し、消費者が日常で使用するもののみならず、医療機関でも必要な衛生品が圧倒的に不足する状況が続いた。

このような情勢に対応するため、行政からは、さまざまな特例的な対応に関する政令や通知等が出された。経済産業省からは、国民生活安定緊急措置法に基づき、3月15日から衛生マスク、 5月26日からは消毒等用アルコールの転売禁止の措置が取られ、国民が日常生活の中で新型コロナウイルス対策を行うために有効となる漂白剤、界面活性剤等の評価・公表が行われた。

厚生労働省からは、医療機関で不足する医薬品・医薬部外品の消毒用アルコールに代替するものとして、要件を満たした高濃度エタノール製品を時限的・特例的に認める通知(※)を出したほか、オンライン診療に関しても時限的・特例的に認める通知が出されるなどした。また、消費者庁からは、食品表示基準に基づく表示を一部弾力的な運用にするなどの通知が出された。

※厚生労働省は4月22日付事務連絡で、60vol%台の高濃度エタノール製品を、医療機関等での手指消毒用エタノールの代替品として使用することができる旨、またその製品を販売する事業者は「本製品は医薬品や医薬部外品ではありませんが消毒用エタノールの代替品として、手指消毒に使用することが可能です」と広告や製品に表示できる旨を通知した。(臨時的・特例的対応なので、今後、変更・廃止される可能性がある)

「関連ご意見」月別件数

「関連ご意見」の月別件数が下記の表である。[1~3月]は計118件だったが、[4~5月」は計326件と急増した。前年同月に比べ、「苦情」全体が増加している。
苦情に対する「関連ご意見」の割合を見ると、5カ月平均で9.9%、4月には21.6%を占めた。

月別件数の表。「関連ご意見」の各月件数と苦情に占める割合は、1月2件、0.2パーセント、2月28件、3.7パーセント、3月88件、10.0パーセント、4月223件、21.6パーセント、5月103件、10.4パーセント。

「関連ご意見」月別件数

月別件数の棒グラフ。

「関連ご意見」の月別グラフ

「関連ご意見」の内訳(重複あり)

月別の内訳である。
表中の赤字※印は、[1-3月]レポート公表時に「表現関連」の「商品供給・サービス提供不可・遅延」で計上したご意見を、今回は「表示関連」の「欠品・遅延・おとり」に変更した。
また、「うんざり」を新設し、[1~3月]の「その他」から分離した。

「関連ご意見」の内訳。1月から5月の合計で、便乗44件、効果45件、対象範囲23件、価格44件、欠品35件、虚偽17件、表示その他25件、不謹慎・好ましくない67件、時期的に不適切100件、不衛生7件、うんざり10件、その他48件。

「関連ご意見」の内訳

主な事例(表示関連)

【便乗と思われるもの】
◆ 美容院のダイレクトメールに、当店に入店すると体や衣類に付いたウイルスも除菌できるとうたっている。
◆ 漆喰がウイルスを死滅させるかのように書かれており、あまりにも信憑性に欠ける。
◆ 飲食店のチラシに、カレーが新型コロナウイルスに効果があるかのように表示している。
◆ 新型コロナウイルス感染症対策と称して、車検基本作業が無料だと表示している。

【効果をうたうもの】
 下記以外に次亜塩素酸水、水素、ケイ素、ハーブ、酸性水、銀イオン、オゾンなどがあった。
◆ 美容外科のSNS広告に、新型コロナウイルス対策をうたってビタミンC点滴を提供している旨が書かれているが、問題ではないか。
◆“気”を送ってコロナがなくなるように言っている。今のような不安定な時期には信じて高額なカウンセリング料を払ってしまう人もいると思う。(医療機関)
◆ 新型コロナウイルス除去率99%超とうたう雑品だが、こんなに簡単に除去できるなら世界は困っていないと思う。不安をあおるような広告はやめてほしい。(情報誌)
◆ プラセンタ注射が新型コロナウイルス感染防止に効くかのようにツイッターに表示している。(美容外科)

【対象範囲を誤認させるもの】
 4月に寄せられた「関連ご意見」はすべてが除菌関連商品。
◆ 広告にアルコール濃度70~75%と書かれていたが、商品には記載がなく、企業の窓口に濃度の根拠を尋ねると、メーカーから口頭で聞いただけだと言われた。
◆ 通販ページに「除菌」「殺菌」「消毒」などと書かれていたが、購入した商品にアルコール濃度の記載がなく、通販会社に問い合わせたところ、アルコール濃度30%であることが分かった。コロナウイルス感染予防のために買ったのにこれでは意味がない。
◆ メーカーサイトの商品紹介ページで除菌スプレーを見た。「99.99%除菌」とあるので、何の菌に効果があるのかを電話で聞いたが、「医薬品ではないので答えられない」という回答であった。問題ではないか。(→[参考2]アルコール濃度の表示を参照)

【欠品・遅延、おとりが疑われるもの】
◆ 外出自粛中なので家電量販店の通販でパソコンを購入した。サイトの表示も注文確認メールも、「在庫あり」「翌日出荷」と記載があったが、注文後に電話で確認すると、在庫がなく7~8週間先になると言われた。納期が大幅に遅れるならメールで案内するべきではないか。
◆「4月のお買い得商品」と広告をしておきながら、いつ行っても店頭に広告の商品が置いていない。おとり広告だと思う。新型コロナウイルスの影響であるなら、店内にその旨を掲示するべきだ。(スーパー、チラシ)

【価格】
価格に関するご意見の多くはマスクに対するもので、4月をピークに、その後5月には落ち着いた。
◆ コロナ対策としてアルコールの代わりに除菌スプレーを購入したが、不当に高額で、成分の表示が雑である。「○日入荷」と表示しているが、日付が毎日変わる。(インターネットモールの出店業者)
◆ 広告には「緊急入荷」「数量に限りがある」などと書かれ、現状に不安を抱えている人の心理を利用するような文言が並んでいる。原価を考えてもここまで高騰することはなく、非常に不快である。
◆ 送料無料と書かれたバナー広告にマスクも掲載されていたのでクリックして通販サイトに行ったら、すべて送料別と明記されていた。
◆「コロナ支援価格」として30%引と表示されているが、母の日特価など理由を変えてずっと同じ販売価格で提供している。割引額を大きく見せる有利誤認表示ではないか。(食品の通販)

【虚偽】
◆ 手指消毒用アルコールだと思って購入したら、送られてきた商品は空のボトルだった。
◆ 掲載されている写真を見て購入したが、届いたのはマスクの形をした布切れだった。商品説明には高性能ポリウレタンと記載されていた。(インターネットモールの出店業者)
◆ チラシには、米国FDA、欧州CEマークの認定工場のマスクと表記されているが、相場より安いので問い合わせると認定工場から取り寄せたもので、マスクがその基準にあるとは表示していないと言われた。(マスク通販)
◆ 日本製マスクと表示されていたので注文したか、商品が届いたら外国製だった。品物も悪かった。

【表示その他】
◆ アルコール消毒製品だが、同じ商品なのに日本製と外国製がある。メーカーに問い合わせると中身は同じだと言うのだが、同じものなら日本製を購入したい。原産国は大事な表示なので大きく書くべきだ。
◆ テレビショッピングでモデルが青い色のマスクをしていたので購入したが、届いたのは白いマスクだった。価格も高く、白なら買わなかった。
◆ 次亜塩素酸水の広告で、口に入ったり飲んだりしても大丈夫であるかように記載している。新型コロナウイルスの名称を表示して効果をうたっているが、薬機法上表示できないはずだ。(ミニコミ誌)

主な事例(表現関連)

【不謹慎・好ましくない】
◆「重要なお知らせ」という広告は、新型コロナウイルスに関する国などの注意喚起と誤認するので問題である。(テレビ)
◆ 緊急事態宣言を受け外出自粛が呼び掛けられる中で、無神経なCMが多すぎる。せめて宣言を反映したテロップを流すなど工夫するべきだ。(無特定)

【時期的に不適切】
広告内容ではなく掲載・放送時期に関するご意見で、4月に60件寄せられた。[1~3月]には旅行、イベントなど外出を伴う娯楽に対してご意見が寄せられたが、その後「3密」や「ステイホーム」が呼び掛けられると、4月には人が集まるシーン、外出を促す表現にもご意見が寄せられた。
◆ 新型コロナが流行している中で、死や病気、入院などを表現した広告は、時間帯、番組、量などを考えて放送すべきではないか。老齢の母がテレビを見て不安になっている。
◆ 外出自粛の時期に、人を集めるセールやキャンペーンの広告は不適切だと思う。(※飲食店、小売店など複数の業種で寄せられた)
◆ 緊急事態宣言が出され、都道府県から外出自粛要請がなされているのに、外出や移動、小旅行を思わせるシーンが不愉快だ。

【うんざり】
◆ 日本全体が不安な状況にあり、コロナ疲れしている中で暗い内容のテレビCMは見たくない。
◆ 多くの国民が自宅待機を強いられているのをいいことに、広告は通信販売に関するものが大多数である。
◆ 一定時間の間に健康食品の広告が3回も流れる。新型コロナウィルスでうんざりしているので、耳障りな声が不快だ。

【その他】
◆ 休校のため子どもが学習でパソコンを使う機会が増えたが、ポータルサイトのトップページに児童ポルノのような広告が表示され、親として大変不愉快だ。(オンラインゲーム)
◆ 医療従事者の子どもが保育園などで断られる事例があるという広告だが、これは一部の例である。すべての保育園やタクシーに問題があるかのように受け取られるおそれがある。
◆ 医療従事者だけCMで取り上げるのはおかしい。
◆ 啓発CMで「コロナ」と言っているが、同名の会社や店、人名などがあり、いじめにつながっている。正式名称である「COVID-19」と言うべきである。

対象となった主な商品・サービス(重複あり)

5月7日公表「1~3月レポート」では、商品・サービス件数を「表示」のみ公表したが、本レポートでは「表示」「表現」をすべて集計した。

1月から5月の合計で、マスク68件、除菌関連商品58件、行政・公共・その他啓発56件、食品46件、流通・通販33件、交通レジャー23件、相談業務14件、医薬品14件、飲食店13軒、建築・不動産12件、ギャンブル12件、医療機関11件、雑品10件、除菌・消毒サービス8件、人事募集7件、通信サービス7件、葬儀・墓地6件、空気清浄機5件。

対象となった主な商品・サービス

商品・サービスの特徴

◆ 1~3月に比べ、4~5月に増加したのは「行政・公共・その他啓発」「相談業務」「建築・不動産」 「医療機関」 「人事募集」「葬儀・墓地」など。
◆ 一方で減少したのは「食品」「交通レジャー」「医薬品」など。
◆ 1~3月に多かった「マスク」「除菌関連商品」は4~5月期にさらに増え、それまで寄せられなかった原産国に関するご意見が見られた。
◆「マスク」は「価格」に関するご意見が過半数を占め、そのほか「欠品・遅延・おとり」「虚偽」などが目立った。
◆「除菌関連商品」は「対象範囲を誤認させるもの」「効果をうたうもの」が多かった。
◆ 行政からのお知らせと誤認するというチャイム音が鳴るテレビCMへのご意見、人権への配慮を求める行政の広告へのご意見が目立った。

関連リンク

【JAROウェブサイト】
・[2020年1月~3月]新型コロナウイルス関連広告の苦情レポート
・次亜塩素酸水で手指の消毒をうたえるの?
・日用品で、菌やウイルスに対する効果を表示する際の留意点は?
・マスクで「ウイルス、花粉を99.99パーセントカット」「PM2.5対策」とうたえるの?

【他機関のウェブサイト】
・新型コロナウイルスの消毒・除菌方法について(厚生労働省・経済産業省・消費者庁特設ページ)
・新型コロナ関連消費者向け情報(消費者庁ウェブサイト)
・新型コロナウイルス感染症関連(国民生活センターウェブサイト)

【行政処分など】
コロナ対策をうたった健康食品で書類送検(3月31日、警視庁)
携帯型の空間除菌用品の販売事業者5社に対する行政指導について(5月15日、消費者庁)
株式会社メイフラワーに対する景品表示法に基づく措置命令について(5月19日、消費者庁)
衛生マスクを販売する事業者に措置命令を行いました(6月15日、埼玉県)

参考1 【除菌剤】雑貨品と医薬品・医薬部外品の違い

除菌スプレーは、物に使用するものと、人の手指に使用する消毒スプレーに大きく分けられます。
医薬品医療機器等法上、雑貨品は「殺菌」や「消毒」などの用語を表示することができません。根拠があれば「除菌」と表示することはできます。
雑貨品は医薬品や医薬部外品でないため、ウイルス名を表示することもできません。

●雑貨品
対象はモノ。ドアノブ、テーブル、おもちゃなど。根拠があれば「除菌」と表示できるが、「殺菌」「消毒」は表示できない。

●医薬品・医薬部外品
対象はヒト。人の手指用。「殺菌」「消毒」と表示できる。

製品評価技術基盤機構(NITE)が次亜塩素酸水が一定条件下で新型コロナウイルスに効果がある旨を公表しましたが、次亜塩素酸水は雑貨品なので、手指消毒ができるとうたうことはできません。

参考2 「99パーセント除菌」、アルコール濃度の表示

●「99パーセント除菌」などの表示
99パーセント除菌などの表示の根拠として、メーカーは幾つかの細菌で除菌効果がある旨の実験をしています。
すべての菌ではないため、広告や容器などには「※全ての菌に効果があるわけではありません」などと注釈を入れているものが多いです。
また、医薬品医療機器等法上、雑貨品は菌・ウイルス名を表示できません。

〔容器の表示例〕
  99.9パーセント除菌スプレー 
  品名:台所用除菌剤
  成分:発酵エタノール、有機酸
  内容量:400ml
  使用方法
  使用上の注意
  ※全ての菌に効果があるわけではありません。

●アルコール濃度の表示
アルコール濃度については雑貨品には表示義務がないため、個別の成分のパーセンテージや配合量の表示は必須ではありません。除菌スプレーは雑貨品ですので書かれていないものが多いです。

参考3 「滅菌」「殺菌」「消毒」「除菌」の整理

滅菌、殺菌、消毒、除菌・ウイルス除去の表示の違いは下記の通りです。
※物品販売における表示

「滅菌」「殺菌」「消毒」「除菌」の整理

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