2020年5月7日お知らせ消費者向け
新型コロナウイルス感染拡大や外出自粛などが行われる状況の中、JAROにはこれに関連する広告・表示の苦情が3月末までの間に118件寄せられた。これらは、表示に関するもの50件、広告表現に関するもの68件の2つに大別される。
こうした内容の苦情について取りまとめた。
2020年1月~3月に寄せられた「苦情」からキーワード「コロナ」「ウイルス」「新型」「肺炎」で抽出し、その中から無関係なものを除いた118件を整理した。
◆表示に関するもの 50件 ・・・下記4参照
新型コロナウイルスへの効果を標ぼうするもの、新型コロナウイルス等と表示(暗示含む)するもの、マスクの高額販売、欠品しているのに広告に掲載、など。
※違反と判断できるものだけでなく、そのおそれも含まれる。
◆広告表現に関するもの 68件 ・・・下記5参照
新型コロナウイルスの感染拡大や外出自粛の状況に関連付け、広告表現が不適切などとする苦情。
苦情内容による大別
月別件数の表
月別件数のグラフ
※1 マスクや除菌剤が欠品して広告通りに販売できないケースが多いと思われるが、マスク等の入手困難が盛んに言われるようになってからの広告においても同様の苦情が寄せられた。
《 便乗と思われるもの 》
◆ エアコン洗浄の広告に「新型コロナウイルス対策に分解洗浄を」などと表示しており、「必須」とまで書いてある。この表示はひどいのではないか。(エアコン洗浄サービス)
◆ 自動車の内装が抗菌加工されていることを、ウイルスに効果があるかのように表示したり、インフルエンザなど具体的な名称に言及している。抗菌加工されているからといってインフルエンザウイルス等に効果があるのか疑問だ。新型コロナウイルスで不安な世の中で誇大広告だと思う。(自動車販売店)
◆ 空気清浄機のチラシに、除去率として99%超の数字を挙げて「新型コロナウイルスにも○○(商品名)」などと書かれている。
◆ 母親宛に健康食品のダイレクトメールが送られて来た。「新型コロナウイルス」への言及があるが、よく読めば酵素を飲んで免疫を上げろというだけでコロナウイルスとは関係ない。完全に誇大広告である。一人暮らしの高齢者だったら「コロナウイルス」と書かれていれば購入してしまうかもしれない。
◆ スーパーの店頭広告でアルコール除菌や99.99%除菌などとうたっているが、今の時期に見ると新型コロナウイルスに効果があると思ってしまう。メーカーに問い合わせるとアルコール58%のキッチン用消毒用品だという。紛らわしく、便乗商法としか思えない。(除菌スプレー)
《 効果をうたっているもの 》
◆ 除菌スプレーのラジオCMで、有害成分を除去すると言っていた。雑菌ならともかく、有害成分の除去などあり得ない。広告主のウェブサイトにはそのような表示はないが、掛け合いCMなので盛っているのではないか。
◆ 新聞広告に、ウイルスを寄せ付けない、やせるだけじゃないなどとうたった健康茶が掲載されている。誇大広告である。
◆ ペット用マウスウォッシュについて、新型コロナウイルスに理論上効果があるという研究結果が出ている、などと表示して、SNSや自社サイトで新型コロナに有効との宣伝を繰り返している。
◆ サプリメントの自社通販サイトに、医師がウイルスに効くと言っているかのように書かれた白衣男性の写真が掲載されているが、写真素材提供サイトに同じ写真があった。実際の医師とは判断できない。
《 対象範囲を誤認させるもの 》
◆ 除菌ができると広告で言っているが、メーカーに問い合わせるとカビ菌のみだという。広告表現を見るとあらゆる菌に有効なのだと思わせる。(除菌剤)
◆ 99%超の数字を示して除菌できる旨をうたっているが、パッケージにはすべての菌に効果があるわけではない旨の注釈がある。メーカーに問い合わせると2種類の菌のみの調査結果だという。それであれば、どの菌なのか記載すべきだ。(除菌剤)
◆ スプレーやアロマオイルなどの広告に「アンチウイルス」と書かれているものが多いが、メーカーに問い合わせると「細菌に効果があることが確認された」との回答があり、細菌とウイルスの区別もついていないようだ。いい加減な表示を取り締まってほしい。(除菌剤)
◆ ラジオショッピングでウイルス対策グッズを販売しているが、何のウイルスに効くかも分からず新型コロナウイルスに効くと思わせている。
《 価格に関するもの 》
◆ マスクの高額転売に対する政府の対応や世間の見方が厳しくなっているにもかかわらず、マスクを通常の5倍以上の値段で販売する広告を載せるのは新聞としていかがなものか。新聞を購読する年齢層から考えても、そのままにしておいてはいけない思う。
◆ 明らかに高すぎる。マスク転売禁止前に慌ててチラシを出したのではないか。(マスク、通販)
《 欠品・遅延、おとりが疑われるもの 》
◆ ドラッグストアの折込広告に手指の消毒液や除菌剤が掲載されていたが、店に行くと「製造が追いつかず入荷していない」とのことだった。コロナウイルスの影響で、数週間前から在庫切れになっているのに、不確実な商品を広告に載せるのはおとり広告としか思えない。
◆ ドラッグストアのチラシにマスクが3種類掲載されており、最近どの店も品切れなので入荷するならと思い開店と同時に行ったが、棚は空だった。店員に尋ねると入ってこないと言う。入荷しないのであれば、広告に訂正を入れるなり、お店の前に張り紙をするなど対応すべきではないか。
◆ 折込広告にトイレットペーパーがお一人様2個限りと書いてあったが、店頭では「お一人様1個限り」と表示されていた。また食品が別の銘柄のものに変わっていた。広告と変更されているのなら、変更理由を表示したり、代替措置を取ってほしい。
《 虚偽と思われるもの 》
◆ ウイルス除去をうたう首から下げる雑品だが、偽りの効果をうたう商品として幾つかの国では販売が禁止されている。
新型コロナウイルスに関連付けた広告表現に対する意見である。そのため、下記(2)で広告対象の商品・サービスを示しているが、それに関係しない意見が多いことを付言する。
広告ルールに違反しないものは、原則として広告主に情報提供するにとどめ、審議対象としていないが、新型コロナウイルスによる感染拡大懸念、外出自粛などに関わる意見が多く寄せられたため、一部の内容を紹介する。
不謹慎・不適切とする意見
◆ くしゃみをするときに手で口を覆っている広告があるが、厚生労働省などが肘などで覆う咳エチケットを推奨している。子どもや知識のない人が見てまねをするおそれがある。
◆ 金融機関のメルマガに、新型コロナウイルスに関して「感染拡大なるか」「リスク回避」と書かれている。死者が出ている事象を金融リスクと結び付け、扇動しているかのような表現である。
◆ チャイムを鳴らし重要なお知らせといっているが、新型肺炎拡大の中、行政機関によるCMと区別が付かないような演出は悪質である。
◆ 風邪で仕事が休みにくい人に向けた表現だが、感染拡大させないためにも自宅で休養することが理想的である。社会に影響があるので責任あるCMを制作してほしい。
◆ 鼻炎薬の広告で、複数の人がいる前で手も当てずにくしゃみをしているシーンがあるが、アレルギー性鼻炎なら咳エチケットを守らなくていいわけではない。新型コロナが流行している中でこうしたCMは違和感を覚える。
時期が不適切とする意見
◆ 外出自粛要請が出ている時期にアミューズメント施設のCMが流れている。若者が集まる施設の広告は不適切ではないか。
◆ 新型肺炎の感染拡大防止が叫ばれているときに、ハイタッチを推奨するのはまずいのではないか。
◆ 男女の学生が香りに誘われて接近するCMは、無症状の若年層がさらなる感染を拡大させる可能性が指摘されている中で、若年層に誤ったシグナルを送っていると思う。
◆ なぜこの時期に旅行の広告をするのか違和感を覚える。
◆ 医療機関でのマスク不足が報道されているので、病気ではない施術でマスクを使う美容外科のCMは中止したほうがよい。
◆ クルーズ船の広告は、パンデミックが起こっている時期に行うべきではないのではないか。
不衛生とする意見
◆ 他人の口元に付いた食品を指で取ってなめるシーンがあるが、新型肺炎やインフルエンザがある中で衛生面に問題があるのではないか。人気俳優なので青少年がまねをするなど保健衛生上の影響が気になる。
◆ 新型肺炎が流行っている中、食べ物を素手でつかむことを勧める内容は好ましくない。
3月31日までの苦情・意見について整理した。新型コロナウイルス感染拡大の影響により、商品の欠品や遅延、イベント等の中止、施設の閉鎖などが起こり、図らずも広告と一致しないケースが出た。その一方で、「新型コロナウイルス」と安易に表示(暗示)する便乗広告や、実証されている範囲を誤認させる広告、ウイルスへの効果をうたう広告など、広告規制に違反するおそれのあるものも見られた。また、マスクの通信販売については、引き渡し時期が「入荷次第」という特定商取引法に違反する広告も見られた。
ウェブ広告については、広告の仕組み上やむを得ないのか意図的なのか判別できない苦情が寄せられている。「SNSを見ているときに、大手通販サイトのマスクの広告が毎日掲載されるが、通販サイトではずっと前から欠品している」「ゲームサイトに大手通販サイトのバナーが出てマスクが800円と書かれているが、サイトに飛ぶと『6000円~』になっている」などといったものだ。また、広告の問題ではないが、フリマサービスで出品されたマスクや除菌剤が「模倣品である」「空のボトルである」という苦情もあった。
今回は、新型コロナウイルス関連の苦情にはどのようなものがあるか、まずは3月分までを取りまとめた。JAROでも感染拡大防止の事務局体制を取る中で、広告を審議する委員会をオンラインで開催するなどの試みを続けている。消費者には、問題があると思われる広告を見かけたらJAROに寄せていただくよう、引き続き呼び掛けていく。