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消費税の総額表示の義務付け

2021年3月18日掲載

  • 消費税特別措置法が2021年3月31日で効力を失います。その後は広告などでは総額表示が再び義務付けられると認識していますが、広告について消費税法など法律の考え方や表示の仕方について情報はありますか?
  •  消費税法は1988年に施行され、翌年4月1日から導入されました。当初は総額表示は義務付けられておらず、改正により第63条として2004年4月1日から導入されています。
     この第63条で、総額表示の対象は消費税課税事業者で、「不特定かつ多数の者に課税資産の譲渡等を行う場合において、あらかじめ課税資産の譲渡等に係る資産又は役務の価格を表示するときは、当該資産又は役務に係る消費税額及び地方消費税額の合計額に相当する額を含めた価格を表示しなければならない」と定めています。2004年の改正前は税抜き表示が主流でした。総額表示の義務付けが導入された経緯として、財務省のホームページには「それまで主流であった『税抜き価格表示』では、レジで請求されるまで最終的にいくら支払えばいいのか分かりにくく、また、同一の商品やサービスでありながら『税抜き価格表示』のお店と『税込み価格表示』のお店が混在しているため価格の比較がしづらいといった状況が生じていました。『総額表示の義務付け』は、このような状況を解消するために、消費者が値札等を見れば『消費税相当額を含む支払い総額』が一目で分かるようにするためのものです。『総額表示』の実施により、消費者は、いくら支払えばその商品やサービスが購入できるか、値札や広告を見ただけで簡単に分かるようになりますし、価格の比較も容易になりますので、それまでの価格表示によって生じていた煩わしさが解消され、消費税に対する国民の理解を深めていただくことにもつながると考え、実施されたものです」とあります。この第63条について2013年10月1日から特別措置法により、消費税率引き上げに際しての事務負担に配慮する形で、税込み価格と誤認されない措置を講じている時に限り税抜き表示のみでもよいという特例が認められていたのが、現在までの消費税表示の流れです。
     この特別措置法が2021年3月31日をもって効力を失い、以後は消費税法第63条の規制のとおり、商品の販売、役務の提供を行うときには消費税を含めた価格を表示することになります。消費税法ではこの規則に対する罰則規定は設けていません。しかし違反表示があれば消費者保護の観点から行政指導が行われる可能性がある、と財務省では説明しています。また、消費者取引の表示ですから、消費税法とともに景品表示法の対象にもなります。消費者庁では「税抜き表示なのに税込み表示と消費者が誤認するおそれのある表示であれば、景品表示法第5条で規制する有利誤認に該当する場合がある」としています。
    税抜き表示なのに税込み表示と消費者が誤認するおそれのある表示とは、どのような表示でしょうか。特別措置法には第11条として「税込価格が明瞭に表示されているときは、当該消費税を含まない価格の表示については、景品表示法第5条の規定は適用しない」という規定があります。消費者庁はこれを受けて公表した考え方の中で、税込み価格と税抜き価格を併記した場合の、明瞭な表示か否かを判断するに当たっての3要素を示しています。
     1.税込み価格表示の文字の大きさ
       税込み価格表示が税抜き価格より著しく小さく、消費者が見落としてしまう可能性があるか
     2.文字間余白、行間余白
       余白の大きさ、一定幅当たりの文字数などから、税込み価格が消費者にとって見づらくないか
     3.背景の色との対照性
       背景の色や文字の色で税込み価格がわかりにくくないか

     ところで上記の考え方は併記をした場合であって、広告中に単独で〇〇円(税抜き)と表示される場合はどうでしょうか。
    2021年1月7日に財務省から公表された「事業者が消費者に対して価格を表示する場合の価格表示に関する消費税法の考え方」には、「総額表示義務は、取引の相手方に対して行う価格表示であれば、店頭における表示、チラシ広告、新聞・テレビの広告など、それがどのような表示媒体により行われるかを問わない」と記載されています。したがって、広告内にある「販売する商品等の価格」は、すべて税込み表示あるいは併記の必要があると思われます。また景品表示法では、消費者庁ホームページの「表示に関するQ&A」の「Q18 商品の価格を表示する際、必ず消費税込みの価格を表示しなければいけないのでしょうか」で、消費税込みか否かを示さないで消費税抜きの価格のみを表示することは、不当表示に該当するおそれがあると回答しています。
    なお店頭での販売にあたっては、財務省では「個々の商品本体における価格表示が税抜き表示になっている場合であっても、販売場所の棚札やPOPなどで、商品の税込み価格が消費者に一目で分かるようにしておけば、総額表示義務との関係では問題ないこととなる」と説明しています。

     ではどのような書き方が総額表示に該当するのでしょうか。財務省では次の例示を挙げています。
    11,000円
    11,000円(税込み)
    11,000円(税抜き価格10,000円)
    11,000円(うち消費税1,000円)
    11,000円(税抜き価格10,000円、消費税1,000円)
    11,000円(税抜き価格10,000円、消費税率10%)
    10,000円(税込み価格11,000円)

    ちなみに、もともと特別措置法第10条第2項では、総額表示に対応することが可能である事業者は、できるだけ速やかに総額表示にすることを求めています。これについて財務省では、総額表示に対応することが可能である事業者には、消費者の利便性に配慮する観点から、自らの事務負担などを考慮しつつ、できるだけ速やかに総額表示に対応するよう努めていただくこととなります、とホームページで説明しています。

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