2025年7月10日お知らせ消費者向け
(1) 総受付件数は10,796件・前年比99.3%、前年並み
(2) 苦情 業種別:不快な広告への苦情急増で、オンラインゲーム、電子書籍が上位
(3) 苦情 媒体別:インターネット上の不快な広告への苦情増
(4) 苦情対応状況 広告主への情報提供は苦情685件
(5)「見解」発信は25件 うちインターネットが22件を占める
(6) 性的・暴力的な広告への苦情が増加
(7) 多数の苦情が寄せられるのは一部の広告主
2024年度にJAROが受け付けた総数は10,796件(前年比99.3%)で、前年並みとなった。
苦情は8,450件(96.8%)、277件減とやや減少し、後述のとおり上位の業種に変化があった。称賛は28件(同147.4%)ですべてがテレビCMである。件数は少ないが、以前から良かった旨の意見が寄せられており、2017年度に「称賛」という分類項目を新設した。
照会は1,727件(同112.8%)と大きく伸び、化粧品や医薬部外品、保健機能食品などが大きく増加し、医院・病院、医療機器などの相談も増加した。
苦情の上期・下期別件数推移を見ると、2020年度以降、上期のほうが多い傾向が続いていたが、2024年度は下期(4,355件)が上期(4,095件)を上回った。
また、2024年度は性的・暴力的な表現や、見た目が不快・気持ち悪いといったインターネット上の広告に対する苦情が増加した。この傾向は、後述する業種別、媒体別のデータにも表れている。
苦情の業種別件数では、1位オンラインゲーム、2位電子書籍・ビデオ・音楽配信、3位医薬部外品という順位になった。上位2業種は表現が不快だとする苦情が多数寄せられ、それぞれ前年比162.5%、155.0%と増加した。2022年度から1位だった医薬部外品は減少した。
オンラインゲームは性的な表現や猟奇的な表現などへの苦情が増加した。そのほか、著名キャラクターへの類似性、オプトアウトしても繰り返し表示されることなどもあった。広告主別に見ると1位が184件と突出、2位は36件で、いずれも海外事業者である。
電子書籍・ビデオ・音楽配信は、406件中322件が電子コミックだった。性的な表現への苦情が215件寄せられたほか、暴力的表現が不快という苦情も見られた。
医薬部外品は2022年度から1位だったが、育毛剤やシミへの効果をうたったものなどが減少し、3位となった。美容健康商品はインターネット上の広告・表示を中心に2018年度ごろから苦情が増加し始め、コロナ下をピークに減少に転じていたが、医薬部外品についてはその後も著しく不適切な表示への苦情が続いていた。健康食品については今期、精力増強をうたう広告の性的表現に86件の苦情が寄せられ、4年ぶりに増加した。
通信販売は1社の苦情が143件を占めており、大幅な割引やポイントがもらえるなどとうたっているにもかかわらず、広告に条件が書かれていない、広告がオプトアウトできない、広告ビジュアルが不快、などさまざまな苦情が寄せられた。
詐欺と思われる事例の苦情もあり、有名メーカー製、大学との共同開発などとうたった偽物の通販が81件寄せられた。海外の事業者によるもので、商品はポケットwi-fi、スマートウォッチ、壁掛けクーラーなどさまざまで、購入すると劣悪品が届く。また、投資詐欺の苦情も46件あり、著名人の画像を使った虚偽の記事風見出しやトーク番組画像を使い、LINEの友達登録に誘引するものである。
苦情の媒体別上位は、前年度と変わらず、インターネット、テレビ、ラジオの順となった。インターネットは前年比107.2%と増加したが、他の媒体は減少となった。
インターネットの内訳は、①オンラインゲーム(428件、前年比222.9%)、②電子書籍・ビデオ・音楽配信(357件、155.2%)、③医薬部外品(286件、77.5%)、④医院・病院(260件、185.7%)、⑤健康食品(保健機能食品以外)(197件、129.6%)だった。内容では、不快な表現やオプトアウトなどの手法に関するものが増加した。
テレビの苦情件数は全体として前年比88.2%と減少した。内訳は、①団体(170件、126.9%)、②医薬品(111件、79.9%)、③買取・売買(107件、85.6%)、同率③加工食品(107件、102.9%)、⑤自動車(101件、112.2%)だった。前年度にオンラインゲームや買取・売買のテレビCMに苦情が多数寄せられていたが、今期は苦情が集中するCMが多くなかったため減少となった。
ラジオの内訳は、①相談業務(53件、58.9%)、②団体(26件、81.3%)、③健康食品(保健機能食品以外)(19件、475.0%)、同率③医薬品(19件、172.7%)、⑤買取・売買(16件、55.2%)だった。健康食品については特定の企業に15件寄せられた。
苦情を内容別に見ると、今期は「表示」が減少、「表現」「手法」が増加となった。
表示は価格・取引条件の減少が目立ち、特にインターネット上のものが993件(前年度1,420件)と減少幅が大きかった。表示で増加が目立った業種は通信販売157件(同58件)で、減少したのは医薬部外品233件(前年度351件)、医薬品83件(同368件)など。
表現では、オンラインゲーム353件(同183件)、電子書籍・ビデオ・音楽配信330件(同186件)、医院・病院139件(同66件)、健康食品(保健機能食品以外)160件(同60件)などが増加した。これらは、性的な表現に多数の苦情が寄せられたもの。加えて、オンラインゲームと電子書籍・ビデオ・音楽配信については、暴力的・猟奇的表現などへの苦情もあった。
手法は、オンラインゲーム、電子書籍・ビデオ・音楽配信などが多かったが、増加したものは、医院・病院18件(同5件)、通信販売45件(同16件)、減少したのは買取・売買7件(同28件)などがあった。何回オプトアウトしても繰り返し表示される、バナーの「×」ボタンを押しているのに広告主のサイトに遷移するといった苦情などがあった。
今期増加した性的な広告への苦情は主に表現に含まれ、画像やテキストなどが不快とするものは「音・映像」、性差別などは「差別・ジェンダー」、子どもへの影響などは「社会規範」と、苦情内容の主訴により分類している。
年齢・性別別の件数は表のとおりで、10代男性、30代女性、50代以上男性、50代女性が増加となった。
10代からの苦情はオンラインゲーム、電子書籍・ビデオ・音楽配信、加工食品などが多かった。いずれも表現に対する苦情が目立ち、殺人や血が飛び散るなど猟奇的な表現、早口な人工音声などに対するものだった。媒体はインターネット107件、テレビ52件。
今期多かった性的な広告への苦情(705件)については、特に多かったのが30代(182件)と50代(204件)だった。30代は女性が多く(138件)、50代は男性が多かった(140件)。
JAROでは苦情を基にさまざまな対応を行っている。2024年度は、広告主への情報提供を11回(苦情685件)行った。会員企業については会員専用ページを通じて当該社の苦情1,562件を情報提供した。業務委員会および分科会で審議した結果である「見解」発信は25回(24社)、委員会審議を経ずに事務局から出される文書発信は11回(11社)などとなった。(見解発信の詳細は次ページ)
2024年度は25件の「見解」発信を行い、業種では医薬部外品8件(前年度9件)が多く、健康食品(保健機能食品以外)、化粧品など美容健康系商品が上位となった。苦情受付件数ではこれらの業種は減少傾向にあるが、著しく不適切なものは依然として苦情が寄せられている。
医院・病院は3件あった。糖尿病治療薬をダイエット目的で処方するというGLP-1ダイエットの医療機関とサイト運営事業者、医療ダイエットが12カ月0円などとうたう医療機関に対するもの。
「見解」対象の媒体はインターネットが22件を占めた。インターネットが最も多い状況は2011年度から続いている。そのほかテレビCM、ラジオの生コマーシャルが1件ずつあった
2024年度の厳重警告・警告一覧
●厳重警告1 医薬部外品(クリーム)
「若返りすぎて炎上」、合理的な根拠に基づかず「堂々の3冠受賞」などと表示。
媒体:インターネット(アプリ内動画広告、中間ランディングページ、自社販売サイト)
●厳重警告2 医薬部外品(クリーム)
厳重警告1と同じ事例。アフィリエイター宛。
媒体:インターネット(アプリ内動画広告、中間ランディングページ)
●厳重警告3 医薬部外品(クリーム)
「20代の頃の肌が手に入った」との体験談や、合理的な根拠なしに「美容皮膚科医の間で話題」などと表示。
媒体:インターネット(アプリ内動画広告、中間ランディングページ、自社販売サイト)
●厳重警告4 医薬部外品(クリーム)
「絶対にしわが消える」などと違法な効果の表示や、事実がないのに「○○(テレビ番組名)炎上後爆売れ」などと表示。
媒体:インターネット(中間ランディングページ、自社販売サイト)
●厳重警告5 医院・病院
医療法上の広告可能となる条件を満たさず、「GLP-1内服薬で食欲を減らし痩せ体質に」などと表示。
媒体:インターネット(ニュースサイト上の動画広告、中間ランディングページ、そこから遷移したサイト)
●厳重警告6 医院・病院
厳重警告5と同じ事例の予約サイト運営事業者宛。
媒体:インターネット(ニュースサイト上の動画広告、中間ランディングページ、中間LPから遷移したサイト)
●厳重警告7 化粧品(美容液)
「肌のサビ抜き」などと違法な効果の表示や、わずか1日のみ1位獲得したことを「○○(大手通販サイト)で3冠獲得」などと表示。
媒体:インターネット(中間ランディングページ、自社販売サイト)
●厳重警告8 健康食品(サプリメント)
「飲む脂肪吸引」など違法な効果の表示や、合理的な根拠なしに「圧倒的リピート率97.2%」「メディア掲載実績多数」などと表示。
媒体:インターネット(中間ランディングページ、自社販売サイト)
●厳重警告9 医薬部外品(育毛剤)
白髪が黒髪になるかのような承認内容を逸脱した表示のほか、根拠なくテレビで紹介・爆売れ、国が認めたなどと表示。
媒体:インターネット(中間ランディングページ、自社販売サイト)
●厳重警告10 医薬品(第2類医薬品)
広告主が出演するラジオショッピング(生コマーシャル)で、承認を受けた効能効果の範囲を逸脱し、中性脂肪の値が下がる、本品を飲むだけで痩せるかのように説明。
媒体:ラジオ
●厳重警告11 保健機能食品(栄養機能食品)
栄養機能食品なのに子どもの身長が伸びたり集中力が高まったりするような効果を表示。
媒体:インターネット(中間ランディングページ、自社販売サイト)
●厳重警告12 医薬部外品(育毛剤)
承認を受けた効能効果等の表現の範囲を逸脱して、3日で薄毛がフサフサになる、黒髪が生えるなどと表示。
媒体:インターネット(中間ランディングページ、自社販売サイト)
●厳重警告13 医薬部外品(クリーム)
認められた効能効果の範囲を逸脱し、塗って寝るだけでシミが消える、肌が若返るかのように表示。
媒体:インターネット(アフィリエイトサイト、自社販売サイト)
●厳重警告14 医療機関
脂肪溶解成分を通常の5,000倍配合、医療ダイエットが12カ月分0円などと表示。
媒体:インターネット(SNS上の広告、中間ランディングページ、自社サイト)
●厳重警告15 化粧品
承認を要しない化粧品で標ぼうできる効能効果の範囲を逸脱し、どんなシミでも一瞬で漂白などと表示。
媒体:インターネット(中間ランディングページ、自社サイト)
●警告1 エステティックサロン
合理的な根拠なしに「医療監修施術」「肌再生」などと表示。
媒体:インターネット(美容系サロン検索・予約サイト)
●警告2 化粧品(頭皮用美容液)
「もう染めない」「黒髪本来の美しさを引き出す」などと白髪が黒髪になるかのような表示。
媒体:インターネット(SNS上の画像広告、中間ランディングページ、自社販売サイト)
●警告3 浴場(岩盤浴)
顧客の感想を基に細胞活性化、老化防止などと表示。
媒体:インターネット(自社サイト)
●警告4 貴金属
販売期間が定かではない定価を比較対照価格として55%OFFなどとセールを繰り返して表示。
媒体:インターネット(自社販売サイト)
●警告5 医薬部外品(薬用歯磨き)
汚れを落とす実験や体験談などの保証表現のほか、別人による使用前後写真であるのにそれを小さく表示。
媒体:テレビ
●警告6 健康食品(飲料)
痩せ菌ドリンクを飲むだけなどと医薬品的な効能効果を表示
媒体:インターネット(アフィリエイトサイト、アンケートサイト、自社販売サイト)
●警告7 健康食品(飲料)
警告6と同一の事例。アフィリエイター宛。
媒体:インターネット(アフィリエイトサイト、アンケートサイト)
●警告8 健康食品
頭皮の発毛促進、育毛剤をやめたなどと医薬品的な効能効果を表示
媒体:インターネット(SNS上のバナー、中間ランディングページ、自社販売サイト)
審査結果の定義 (2020年6月18日公表「JARO審査基準改定について」から)
【厳重警告】 警告相当の広告または表示であって、問題箇所の数、消費者に誤認を与える程度等により、その不当性が特に高いと認められることから、当該広告または表示を直ちに削除または修正することが必要と認められるもの。
【警告】 広告または表示が、実際のものより著しく優良・有利に表現され、消費者に誤認を与えるもの、または広告・表示関係法令に抵触することが明らかであることから、当該広告または表示の速やかな削除または修正を求めることが必要と認められるもの。
【要望】 広告または表示が、実際のものより著しく優良・有利に表現され広告・表示関係法令に抵触する疑いがあるもの、または消費者の誤認を招くおそれがあることから、当該広告または表示の削除または修正を求めることが必要と認められるもの。
【助言】 広告または表示が、消費者の誤解を招く、または社会的・道義的問題等を有する可能性があるため、修正等の検討を求めることが必要と認められるもの。(従来の「提言」から名称変更)
性的・暴力的・猟奇的な表現については毎年苦情が寄せられるが、特に苦情の多い場合には、広告主に対し苦情件数や内容などを情報提供している。2024年度は性的な広告表現への苦情が増加したため、広告主4社(苦情件数144件)に情報提供を行い、業種として苦情の多かったオンラインゲーム、電子コミックの業界団体にも2025年4月に情報提供を行った。
705件のうちインターネット上のものが604件を占めた。業種で多かったのは、電子書籍・ビデオ・音楽配信215件(ネット上のものは210件)、オンラインゲーム97件(同89件)、医院・病院94件(92件)、健康食品(保健機能食品以外)86件(同81件)などである。
寄せられた苦情を見ると、表現が不快だというものだけでなく、子どもが見てしまうことの懸念や、子どもを含め誰でも閲覧するような場(ウェブサイトやプラットフォーム)で表示されること、非表示にしたりプラットフォームに苦情を入れてもたびたび表示されることなどの苦情も見られた。
また、性的表現以外でも、オンラインゲームと電子コミックには恐怖感を与える表現やグロテスクな表現にも苦情が多く、広告主1社に対して情報提供を行った。苦情は「血が飛び散るシーンが気持ち悪く、怖い」「人殺しの場面を何度も見せられる」「穏やかなゲームアプリなのにグロテスク・ホラー的なゲームの広告が出てくる」「子どもが遊ぶアプリで流れるのでやめてほしい。大人が見ても気分が悪くなる」など。情報提供した時点(12月)で対象となった苦情数は121件だったが、2024年度全体で当該広告主の広告への苦情は184件に上った。
寄せられた苦情例
▼「スマートフォンでディズニー映画について調べていたところ、性的な漫画の広告が表示された。広告主へ不適切であると伝えてほしい」(電子コミック)
▼「普通のサイトに、股間をあらわに腰を振る未成年と思われる少女の広告が出る。性加害を表現する広告を載せないようにしてもらいたい」(オンラインゲーム)
▼「子どもと見ていた動画共有サイトで、男性器増大の広告がいきなり出てきて困った。22時以降ならまだしも昼間は子どもと見ているので不適切だし教育上良くない」(クリニック)
▼「動画共有サイトで女性の裸や下着姿、男性器のイラストなどを表示する広告が出た。とても不快で不適切。小学生の娘が見てしまい動画共有サイト運営元と広告主は謝罪してほしい」(健康食品)
2024年度の苦情8,450件のうち、広告主が特定できた苦情(※)は7,919件で、これを広告主別に見ると2,945事業者になる(平均2.69件/事業者)。このうち、苦情の多い広告主上位50社(全事業者の1.7%)の苦情件数は2,165件(苦情全体の27.3%)だった。上位100社(3.4%)の苦情件数は2,979件(37.6%)、上位300社(10.2%)は4,366件(55.1%)。
一方、苦情が年間1件の広告主は2,058事業者で広告主全体の約7割、苦情全体の約4分の1を占める。
非常に多くの広告主に対して苦情が寄せられるが、ごく一部の広告主に苦情が集中し、その他の多くの広告主は数件程度となっている。
※広告主が特定できないものは、広告主名が不明なもの、広告全般を指すもの、特定の業界を指すものなど。