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2024年7月5日お知らせ消費者向け

2023年度審査状況公表(HTML版)
苦情は8,727件・前年比94.8%、ほぼコロナ前の水準に
買取サービス、No.1表示、脱毛サービスをトピックスとして取り上げました

2023年度の審査状況(HTML版)

苦情は8,727件・前年比94.8%、ほぼコロナ前水準に戻る

2023年度の各件数は表のとおりで、「称賛」を除き減少となった。総受付件数、苦情ともに2020年度に急増後、3年かけて減少し、2023年度はコロナ前の2018年度並みの件数となった。(コロナに関する苦情は2020年1月から3月(2019年度)に寄せられていたため、2019年度からその影響があったものと捉えている)
その他、「照会」については71.7%と減少、「JARO関連」92.6%、「広告以外」88.5%となった。
受付経路別では「オンライン」と「電話・FAX等」がいずれも前年比94%余りとなった。

苦情件数推移の棒グラフ 2015年度6001件、16年度7019件、17年度7547件、18年度8386件、19年度9324件、20年度11560件、21年度10319件、22年度9206件、23年度8727件。
23年度の各件数 苦情8727件、称賛19件、照会1531件、JARO関連88件、広告以外509件。また、苦情のうちオンライン受付は6729件、電話FAX等は1998件。

苦情 業種別:不適切な化粧品・健食は減少したが医薬部外品は変わらず

苦情の上位10業種は表のとおりで、医薬品、オンラインゲーム、電子書籍・ビデオ・音楽配信、買取・売買などが増加した。化粧品、健康食品(保健機能食品以外)は前年度に続いて大きく減少した。
医薬部外品は2022年度の過去最多件数(510件)から若干減少したが、引き続き業種別で最多となった。広告主10社余りに苦情が集中しており、商品は育毛剤、除毛剤、美容液、クリーム、歯磨き、整腸剤などである。育毛剤では、使用前後写真を用いて過度な発毛効果を表示しながら「個人の感想です」と打ち消す表示を行っていることへの疑義、薬用歯みがきでは、歯の白さを強調した使用前後写真が加工もしくは別人であるなど体験談が虚偽であることの指摘が多数寄せられた。
医薬品は、景品キャンペーンの企画が事後的に変更されたことに対して苦情が297件寄せられたほか、ワクチン広告の是非などもあり急増した。
オンラインゲームはあるゲームの女性の表現について60件、別のゲームの女性の性的な表現について46件寄せられ、前者は59件がテレビCM、後者は全件がインターネット広告だった。
買取・売買については、2020~21年度に着物・宝飾品・ブランド品などを扱う買取サービスを中心に苦情が増加していたが、23年度はこれが再度増加した。(「2023年度のトピックス」に関連記事)
化粧品と健康食品(保健機能食品以外)は2021年度から継続して減少となった。化粧品は媒体「インターネット」が140件減で、特に価格・取引条件に関する苦情の減少が目立った。健康食品(保健機能食品以外)は90件減となり、媒体別に見ると「インターネット」28件減、「テレビ」45件減だった。健康食品(保健機能食品以外)は2020年度上半期、化粧品は2020年度下半期をそれぞれピークとして減少に転じた。保健機能食品については188件(前年度171件)と増加した。医薬部外品、化粧品、健康食品(保健機能食品以外)、保健機能食品の4業種は、2020年度の計2,248件から2023年度の計1,226件へ約1,000件減少しており、3年間である程度広告・表示の適正化が推進されたものと思われる。

業種別苦情件数の表。上位は医薬部外品491件、医薬品479件、化粧品303件、オンラインゲーム288件、電子書籍・ビデオ・音楽配信262件。美容健康系4業種の折れ線グラフは、健康食品は20年度をピーク、化粧品は21年度をピークに激減。医薬部外品は20年度に急増したあと500件前後を推移。保健機能食品も22年度から急増。

苦情 媒体別:インターネットは微増、テレビは1割減

2023年度の媒体別件数は表のとおりで、インターネットはほぼ前年度並み、テレビは1割減、ラジオは1割増となった。インターネットは2020年度に最多となったあと減少が続いたが今期は微増となった。テレビは年度による増減はあるが俯瞰で見れば増減はあまりないない。(右下グラフ)
インターネットの内訳を見ると、上位は医薬部外品369件(前年度比108.5%)、医薬品274件(1014.8%)、電子書籍・ビデオ・音楽配信230件(113.3%)で、いずれも増加した。そのほか、オンラインゲーム192件(同128.9%)、医院・病院140件(同202.9%)などの増加が目立った。減少したのは化粧品207件(同59.7%)、健康食品(保健機能食品以外)152件(同84.4%)、保健機能食品77件(同77.8%)などだった。
テレビの上位は、医薬品139件(同136.3%)、団体134件(同80.7%)、買取・売買125件(同152.4%)だった。その他増加したのは、事業者向け商品・サービス109件(同198.2%)、企業広告103件(同145.1%)などで、減少したのは前述の団体や医薬部外品116件(同80.0%)などだった。
ラジオの上位は相談業務90件(同103.4%、司法書士事務所や弁護士事務所など)、団体32件(同145.5%)、買取・売買29件(同131.8%)で、いずれも前年度より増加した。これ以外では、旅行予約サイトでCMの音に対する苦情が27件(前年度0件)寄せられた。

苦情の媒体別件数の表。上位はインターネット4035件、テレビ3633件、ラジオ338件、店頭234件、チラシ184件。
上位2媒体の苦情件数推移。インターネットは20年度をピークとした山型、テレビは年度によって増減がありつつも4000件前後を推移。

苦情内容別:価格や取引条件の割合は増加傾向

苦情を内容別に、表示、表現、手法の3つに大別しており、2019年度以降は表示が過半数となる状況が続いている。
表示は主に「価格・取引条件等」と「品質・規格等」があり、「価格・取引条件等」については、苦情全体に対する構成比ベースで増加傾向にある(21年度22.4%、22年度24.3%、23年度25.4%)。業種で多かったのは、医薬品、買取・売買、病院・医院などだった。
「品質・規格等」については2020年度に急増(3,331件)したが減少傾向にあり、多い業種は医薬部外品、化粧品、健康食品(保健機能食品以外)などだった。
表現については例年「音・映像」が多くを占め、事業者向け商品・サービス、電子書籍・ビデオ・音楽配信、オンラインゲームなどの業種で、この項目の苦情が多かった。苦情対象の表現はさまざまだが、女性の描き方、特に性的表現については、オンラインゲームや電子書籍(コミック)で表現自体への不快感や掲載場所への無配慮という苦情が目立っている。また、ジェンダー平等を啓発する広告に「偏見だと言われて不快」などとの苦情が49件寄せられた。
音については、「CM内の音が緊急地震速報かと思ってびっくりする」、アラーム音やバイブレーション音が「自分のスマホのものと勘違いする」などが寄せられた。コロナ期に増加していた「不快」「気持ち悪い」といったキーワードは減少傾向にある。
手法は本来JAROが扱う表示・表現とは異なるため件数は多くないが、ポータルサイト・プラットフォームに関して表示される広告がオプトアウトしても継続して表示されるという苦情、士業などの相談業務に関して広告が多すぎるという苦情などがあった。

苦情の内容別件数の表。表示4697件、表現3473件、手法557件となった。表示の内訳の主なものは、価格取引条件2219件、品質規格2293件、表現の内訳では音映像2587件、差別ジェンダー355件、社会規範497件、手法の内訳は頻度音量487件、内容70件。
表示、表現、手法の苦情件数推移。表現と手法はあまり変化がないが、表示は20年度を頂点とする山型となっている。

苦情申立者の年代・性別:60代以上で医薬部外品、買取・売買など増加

苦情全体(8,727件)は前年度比94.8%で、5.2%ほど減少しているが、60代、70代以上で増加したほか、10代女性、20代男性も若干増加した。
60代、70代以上を見ると、上位業種は医薬部外品145件(前年度97件)、買取・売買76件(同44件)、化粧品57件(同60件)、保健機能食品56件(同35件)など。
特に、医薬部外品、買取・売買、保健機能食品は23年度の増加により、苦情全体にこの年代が占める割合はそれぞれ3割ほどに上った。
10代、20代では、医薬品114件(同11件)、オンラインゲーム81件(同58件)、電子書籍・ビデオ・音楽配信49件(同65件)が上位業種であり、増加したのは医薬品(前述のキャンペーン変更の苦情など)、オンラインゲーム、エステティック46件(同30件)などだった。媒体別で伸びたのはインターネットが631件(同560件)、内容別では価格・取引条件に関するものが239件(同144件)だった。
一方、30代~50代は減少し、特に40代は前年度比82.8%と減少幅が大きかった。

苦情申立者の年代・性別の表。10代141件、20代931件、30代1349件、40代1868件、50代2027件、60代1260件、70代以上510件、不明641件。男女別では男性5397件、女性3285件、不明45件。

「見解」発信は31件 インターネット30件は過去最多

2023年度は31件に「見解」を発信した。内訳は厳重警告17件、警告12件、要望2件、助言0件(前年度はそれぞれ7件、17件、1件、1件)で、より重い厳重警告が増加した。
「見解」対象となった業種は上位が医薬部外品、化粧品、健康食品(保健機能食品以外)で、それぞれ前年度件数を上回った(前年度は各4件、5件、2件)。保健機能食品は、栄養機能食品2件、機能性表示食品1件の計3件あった。インターネットは2011年度から13年連続で最も多い媒体となっているが、30件は過去最多である。
2023年度の「見解」では、不適切なNo.1表示が15件(前年度8件)、定期購入が13件(同4件)含まれていたほか、国・厚生労働省の承認、医学誌掲載、学会認定など公的機関や権威から認められたかのような表示や、テレビや雑誌で紹介されたかのような表示、事実と異なるカウントダウンタイマーや二度とお得に購入できないかのようなダークパターンなど、虚偽や誤認させる表示が多く見られた。
この「見解」とは別に、審議の俎上には上げないが文書での対応を必要とするものに事務局から文書を発信しており、2023年度は12件発出した(前年度9件)。

見解発信した業種・媒体の表。23年度で多かった業種は医薬部外品9件、化粧品7件、健康食品(保健機能食品以外)4件、保健機能食品3件など。媒体については31件中30件がインターネットで、残る1件は折込。
処理概要の表。23年度苦情8727件のうち、電話照会・情報提供72件、文書照会19件、事務局から文書発信9件、他機関に情報提供90件、広告主に情報提供657件、会員専用ページでの情報提供1904件(重複あり)。前年度からの継続案件も含む23年度処理状況は、見解31件、事務局からの文書発信12件。

2023年度の厳重警告・警告一覧  ( )内は媒体

≪厳重警告≫
1.SNS上の広告に「衝撃の7〇歳!?」とあるが実在しない人物であり、虚偽の体験談や「シワ97%改善」など承認を受けた内容を逸脱する効能効果をうたっていた医薬部外品の美容液(インターネット〈SNS上のディスプレイ広告、中間ランディングページ、自社販売サイト〉)
2.1本無料で試して解約できる旨をうたいながら解約条件により無料で試せず、有効成分以外の成分の効果、効果の保証表現などをうたっていた医薬部外品の育毛剤(インターネット〈アフィリエイトサイト、自社販売サイト〉)
3.届出表示は「エラグ酸には、肥満気味な方の体重(略)の減少をサポートし、高めのBMI値の改善に役立つことが報告されています」であるのに、「3週間で脂肪が激減」などと逸脱した表示をしていた機能性表示食品(インターネット〈アフィリエイトサイト、自社販売サイト〉)
4.「飲むだけで15kg痩せる薬」などと痩身効果をうたったコーヒー健康飲料(インターネット〈アフィリエイトサイト、自社販売サイト〉)
5.「全身トライアル脱毛 初回1,980円 12カ月無料体験」とうたっているが、実際には1,980円+シェーバー代1,000円が12回かかるものだった脱毛エステティックサロン(インターネット〈自社サイト〉)
6.シミがはがれるかのような表示をしていた医薬部外品のクリーム(インターネット〈アフィリエイトサイト、自社販売サイト〉)
7.「医薬品にも使われる成分を使うらしい」「毛穴が9割減少」などと逸脱した効果をうたった化粧品の洗顔料(インターネット〈SNS上の動画広告、アフィリエイトサイト、自社販売サイト〉)
8.「ニキビ肌が綺麗なツルツル肌になった」などと効果や体験談、使用前後写真を掲載した医薬部外品のクリーム(インターネット〈アフィリエイトサイト、自社販売サイト〉)
9.「通い放題3カ月集中9,800円」などとうたっているが、総額18万~30万円かかる減量コース受講後の維持期間の料金にすぎなかったエステティックサロン(インターネット〈自社サイト〉)
10.「たった1回で」「髪を黒くしたい人」などと黒髪が生えるかのように表示をしていた医薬部外品の育毛剤(インターネット〈バナー、中間ランディングページ、自社販売サイト〉)
11.「自宅で歯石が取れる」「国が認めた成分を配合」「ノーベル賞を取得した成分」などと表示をしていた医薬部外品のマウスウォッシュ(インターネット〈アフィリエイトサイト、自社販売サイト〉)
12.フェリチン鉄が発達の遅れやさまざまな症状に効果があるかのように表示していた栄養機能食品(インターネット〈動画共有サイトの動画広告、自社販売サイト〉)
13.落ち着きのない子どもへの効果を暗示する鉄分の栄養機能食品(インターネット〈SNSのインフィード広告、中間ランディングページ、自社販売サイト〉)
14.「着床サポート」などと不妊に効果があるかのように表示した健康食品(インターネット〈自社販売サイト〉)
15.「イボが取れる」「医師も注目!お肌の再生成分」などとうたった化粧品の美容液(インターネット〈アフィリエイトサイト、自社販売サイト〉)
16.1本使っただけで白髪染めが不要になるかのようにうたっていた医薬部外品の育毛剤(インターネット〈漫画アプリ内の動画広告、アフィリエイトサイト、自社販売サイト〉)
17.上記16のアフィリエイター宛てのもの(インターネット〈漫画アプリ内の動画広告、アフィリエイトサイト〉)

≪警告≫
18.「本物の健康茶」「血液をきれいにする効果」などとうたった健康茶(インターネット〈自社サイト〉
19.上記11の健康茶の販売会社(インターネット〈自社販売サイト〉)※11は製造元
20.「7日間限定」と特価をうたった電気シェーバーがおとりのおそれがあるものだった(折込)
21.鼻の角栓をピンセットでつまみ出すような表現や化粧品で認められた効能効果の範囲を逸脱する表示をした化粧品の洗顔料(インターネット〈ゲームアプリ内の動画広告、アフィリエイトサイト、自社販売サイト〉)
22.上記14のアフィリエイト事業者(インターネット〈ゲームアプリ内の動画広告、アフィリエイトサイト〉)
23.「頭皮の血行不良が改善」などと医療機器のような効果をうたった枕(インターネット〈自社販売サイト〉)
24.「毛穴汚れの原因顔ダニ」「SNSで話題沸騰」などと毛穴やシミ、そばかす、ニキビ跡にも効果があるかのようにうたった化粧品の洗顔料(インターネット〈アフィリエイトサイト、自社販売サイト〉)
25.目の下のたるみ取りが8万XXXX円でできるかのように表示しているが、実際には2倍以上の料金だった美容外科(インターネット〈自社サイト〉)
26.ダニのアレルギーが改善するかのように表示したダニ捕りシート(インターネット〈バナー、中間ランディングページ、自社販売サイト〉)
27.「-10歳肌」「シワ・シミ改善」「鎮静作用」などとうたった医薬部外品のファンデーション(インターネット〈SNS上の動画広告、アフィリエイトサイト、自社販売サイト〉)
28.ヒアルロン酸が膝の悩みに効果があるかのようにうたったシート(化粧品)(インターネット〈中間ランディングページ、自社販売サイト〉)
29. 目の下のたるみに効果があるかのように表示した目元用マイクロニードルパッチ(化粧品)(インターネット〈中間ランディングページ、自社販売サイト〉)

審査結果の定義 (2020年6月18日公表「JARO審査基準改定について」から)
【厳重警告】 警告相当の広告または表示であって、問題箇所の数、消費者に誤認を与える程度等により、その不当性が特に高いと認められることから、当該広告または表示を直ちに削除または修正することが必要と認められるもの。
【警告】 広告または表示が、実際のものより著しく優良・有利に表現され、消費者に誤認を与えるもの、または広告・表示関係法令に抵触することが明らかであることから、当該広告または表示の速やかな削除または修正を求めることが必要と認められるもの。
【要望】 広告または表示が、実際のものより著しく優良・有利に表現され広告・表示関係法令に抵触する疑いがあるもの、または消費者の誤認を招くおそれがあることから、当該広告または表示の削除または修正を求めることが必要と認められるもの。
【助言】 広告または表示が、消費者の誤解を招く、または社会的・道義的問題等を有する可能性があるため、修正等の検討を求めることが必要と認められるもの。(従来の「提言」から名称変更)

2023年度のトピックス

●買取サービス 運用基準改正で苦情動向を注視

コロナ下での買取需要の高まりから買取サービスの広告が増加しJAROへの苦情も増えていたが、2023年度に再度増加した。
着物を高価で買い取るというが100円にしかならなかった、広告は誇大ではないかといった苦情が多い。中には次のような苦情もあった。
▼「着物帯 高価買取 20万円という広告を見て自宅に来てもらったが、しつけが付いた明るい色の着物だけを100円で買い取り、貴金属はないかとしつこく聞かれて大変怖い思いをした。このような広告は誇大ではないのか」
▼「20数万円で買い取り、と広告にあったので、来てもらって着物の査定を受けたが100円だった。広告でいう20万円について尋ねると、作家による一品物くらいしかその値は付かないと言われた。これは誇大広告ではないか」

苦情で多いのは、着物や貴金属、ブランド品などの買取サービスだが、中古車に関するものもあり、2023年度は条件なく買い取るかのような表現に苦情が寄せられた。また、不祥事のあった企業について、発覚後にも広告が出されていたことを問題視する声もあった。
買取サービスについては従来、顧客の物品を買い取る行為のため、景品表示法が規制対象とする「自己の供給する商品・役務」に該当しないと解釈されていたが、「景品類等の指定の告示の運用基準について」を改訂し、「査定する等して当該物品等を金銭と引き換える」というサービスを提供していると認められる場合には、「自己の供給する役務の取引に当たる」こととされた。今年4月18日に施行されており、消費者トラブルの減少が期待されている。2023年度の苦情は再び増加したが、今後減少していくか見ていきたい。

買取サービスの媒体別苦情件数推移の棒グラフ。23年度はインターネット65件、テレビ125件、ラジオ29件、折込30件、チラシ20件。

●不適切なNo.1表示 今期「見解」でも15件

商品・サービスの購入者・利用者でない人を対象とした調査で広告に顧客満足度をうたうなど、不適切なNo.1表示については、報道されたり措置命令が出されるなど問題の認識が広がっている。しかし、JAROの審議案件については、2023年度も「見解」15件に含まれており、前年度の8件から増加した。
不適切なNo.1表示が含まれていたのは、厳重警告1、3〜9、12~13、15~17、警告21、27の事例で、次のような表示を行っていた。
▼「多くのお客様にご愛顧いただき3冠受賞!」という表示はブランドイメージ調査であり、表示内容に合った調査ではなかった。(厳重警告6:医薬部外品のクリーム、インターネット)
▼「〇〇(大手通販サイト)第1位売れ筋ランキング」の根拠として示されたのは、〇〇の欲しい物ランキングであり売れ筋ではなかった(厳重警告7:化粧品の洗顔料、インターネット)
▼「顧客満足度第1位」と表示した事例では、言葉遣いや表情、店内のクリンリネスなどを調査員が覆面調査し、同調査を受けた100店舗以上の中で1位だったというものであり、「施術」を受けていない1人の調査員による特定の1店舗の評価だった。また当該調査は 5 年以上前に実施したものだった。(厳重警告9:エステティック、自社サイト)
▼「モニター評価 2部門で№1受賞」と表示していたが、ウェブ調査会社によるブランド名のイメージ調査であり、「モニター評価」との表示から受ける印象と表示が適切に対応しているとはいえないものだった。(厳重警告15:化粧品の美容液、インターネット)

不適切なNo.1表示については、消費者庁から実態調査を行うことが公表されている。
なお、No.1表示については、消費者からの苦情の主訴が別の問題であることが多く、JAROが審議過程で不適切なNo.1表示が行われていることを把握するケースがほとんどである。そのため、No.1表示についてはJAROで認知できた件数となる。

●脱毛サービスの苦情増、特に男性が増加

近年、脱毛サービスの苦情が増えている。2023年度は113件寄せられ、医療機関が24件、エステティックが89件あった。2020年度から増加し、今期はさらに増加した。以前は女性からの苦情が多かったが、2022年度から男性が上回り、2023年度は男性73件、女性40件となった。特にエステティックは男性が多く、脱毛に限らずエステティック全体では72.4%、ほぼ4人に3人が男性となっている。
年代は、医療機関では30代・40代、エステティックでは20代・30代が多い。10代からの苦情もあり、2023年度は8件あった。
媒体はインターネットが大半であり、2023年度は113件中106件を占めた。ソーシャルメディアを入り口とした人が多く、特に動画形式の広告が57件あった。内容別では価格・取引条件に関するものが78件で最も多かった。
特定の1社(エステティック)の苦情が突出しており、2023年度は66件を占めた。
▼簡単なアンケートで全身脱毛が6カ月分0円という広告を見て店舗に行った。事前の電話やカウンセリングで条件を確認したが明確な回答がなく、施術直前になって、「今回は両腕のみかつ1回のみ0円でのお試し」だと言われた。施術後、今後のコース料金の勧誘があったので広告について質問すると、コース施術後に受けられるキャンペーンだという。広告によっては、他の文字の10分の1程度のサイズで料金に関する簡単な注釈のようなものがあるが、それを見ても大々的に表示されている内容の詳細は理解できない。(20代・男性、エステティックサロン、動画共有サイトのインフィード動画広告)
▼「全身+顔またはVIOの5回コース 総額9万XXXX円」と記載があったのでカウンセリングを受けたら、この金額での「全身」の範囲は両肘下・両膝下・脇等のみで、本当の全身脱毛は20万円以上かかると言われた。制限があるなら誤解がないよう記載すべきだ。脱毛関係は悪徳な誇大広告が多く、効果についても過剰な表現が横行しているため規制してほしい。(30代・女性、一般社団法人のクリニック、ソーシャルメディアのインフィード広告)

脱毛サービスの苦情件数。23年度は医院病院24件、エステティック89件、計113件。申立者の性別では2021年度までは女性が過半数だったが、2022年度から逆転。23年度も男性73件、女性40件と男性が多かった。