JARO 公益社団法人 日本広告審査機構

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2019年12月24日お知らせ消費者向け

2019年度上半期の審査状況(HTML版)

2019年度上半期の審査状況(概要)

◇総受付件数は6,125件 過去最多となるペース
総受付件数は6,125件、前年同期比117.0%となり、過去最多だった2018年度を上回るペースである。受付経路別の「電話・FAX等」は前年並みだが「オンライン」が131.3%と伸びた。

◇媒体「インターネット」がテレビとほぼ並ぶ
2013年度から続く1位「テレビ」、2位「インターネット」は今期も同様だが、「インターネット」が前年同期比144.3%と急増したため、両者の差は55件まで縮まった。

◇「表示」の疑義に関する苦情が大幅増
苦情の内容は大別すると「表示」「表現」「手法」に対するものがあり、今期は広告に書かれたことが実際と異なる、誤認させるなどとする「表示」が大きく増え、過半数(54.1%)を占めた。一方で「表現」は若年層および高齢層で高く、10代ではこれが半数を超えている(58.7%)。

◇見解21件を発信、うち17件が媒体「インターネット」
今期の見解は21件のうち、媒体別では「インターネット」が17件を占めた。近年目立つのは、「インフィード広告→アフィリエイトサイト→広告主の通販サイト」といった流れとなるアフィリエイトが絡んだ事例であり、すべてに法違反に当たる「警告」を発信した。

◇2019年度上半期のトピックス
 * アフィリエイトが関わる問題事例
 * 定期購入契約が急増、健康食品と化粧品で7割占める
 * インターネット上の問題表示への対応が課題

2019年度上半期の審査状況

総受付件数6,125件、過去最多となるペース

2019年度上半期(2019年4月~9月)にJAROが受け付けた広告・表示に対する相談は6,125件(前年同期比117.0%)で、過去最多だった2018年度を上回るペースとなっている(2018年度通期11,051件)。その内訳は、「苦情」4,501件、「照会」(広告の制作・受付時の相談)1,024件、「称賛」7件、「JARO関連」77件、広告以外516件で、「称賛」以外が大きく増加した。
今年7月にJAROウェブサイトの送信フォーム「JAROオンラインご意見箱」を改修し、画像添付機能の強化と入力の利便性向上を図った。それ以降、「オンライン」の受付件数が増加したため、全体的に伸びる結果となった。(名称も「広告みんなの声」に変更した)

相談件数内訳 苦情4501件、照会1024件、称賛7件、JARO関連77件、広告以外516件、2019年度上半期計6125件 受付経路別件数は電話FAX等2675件、オンライン3450件

苦情の媒体は「インターネット」が「テレビ」とほぼ並ぶ

苦情の業種別件数は「デジタルコンテンツ等」「健康食品」「自動車」の順となり、上位10業種は「携帯電話サービス」と「通信販売業」を除き、軒並み増加した。
「デジタルコンテンツ等」はアプリやウェブサービスなどであるが、スマートフォン用ゲームが98件と最も多く、「広告と実際のゲーム内容が違う」「ゲームの内容と関係のない性的表現が不快である」などの苦情が寄せられた。「健康食品」は定期購入契約に関するものが74件あり、これらは特定の事業者数社に関するものが多かった。苦情内容は「(痩身等の)効果が得られない」「定期購入だと分からなかった」など。
苦情の媒体別件数は「テレビ」「インターネット」「ラジオ」の順で、2013年度から同じ順位となっている。「テレビ」は前年度に特定の広告に苦情が多数寄せられて増加したため今期は減少しているが、例年と比較すると同水準である。一方、「インターネット」は前年同期比144.3%と大きく増加し、1位「テレビ」とほぼ並んだ。
この2媒体は件数が拮抗しているものの、苦情の傾向が異なる。「テレビ」はその60.7%が広告表現への苦情であり、逆に「インターネット」は価格や品質などの広告・表示に関する苦情が72.4%を占める。JARO業務委員会で審議する案件も「インターネット」が多くを占めている。

苦情の業種別件数 デジタルコンテンツ等379件、健康食品316件、自動車209件、携帯電話サービス167件、化粧品157件、出版物等155件、外食147件、通信販売業139件、飲料嗜好品128件、インターネット関連85件 など。
苦情の媒体別件数 テレビ1962件、インターネット1907件、ラジオ171件、店頭122件、チラシ111件、折込101件、新聞96件、ラベルパッケージ等57件、パンフレット等・DM各56件 など

消費者からの苦情、10代・20代・40代が大きく増加

総受付件数6,125件のうち消費者からの相談は5,031件(全体の82.1%)で、全体比は例年並み(前年同期4,354件、83.1%)だった。ほとんどの年代で増加しているが、その中で20%以上増加したのは、「10代」(前年同期比132.5%)、「20代」(同123.9%)、「40代」(同125.5%)だった。
消費者全体に占める男性の割合は65.6%、女性33.4%(前年同期64.4%、34.2%)と例年通り2対1の割合である。年代と人数を換算した年代の平均は男性41.5歳、女性38.0歳で男性のほうが若干高めとなっている。

消費者内訳の表

「表示」の疑義に関する苦情が大幅増

「苦情」4,501件を申し立て内容別に見ると、大別して(1)表示、(2)表現、(3)手法—に対するものに分かれる。
(1)表示に対する苦情とは、虚偽・誇大、分かりにくいといったもので、広告・表示規制に抵触するものも多く含まれる。JARO業務委員会で審議する案件は主に(1)である。これはさらに、①価格・取引条件等に関するもの、②品質・規格等に関するもの、③その他に分かれ、今期増加が目立ったのは①価格・取引条件等(前年同期比157.8%、412件増)、②品質・規格等(前年同期比216.1%、426件増)である。
(2)表現に対する苦情とは、広告で描かれているものが「セクハラである」「暴力的である」「子どもに悪影響がある」などといった意見(分類上は「苦情」)である。(3)手法とは、CMの音の大きさ、広告の頻度、ステマ、迷惑な広告掲載方法などである。
業種や媒体によってその傾向は大きく異なり、苦情のうち (1)表示が占める割合が高い業種は「健康食品」66.3%、「携帯電話サービス」69.5%、「化粧品」68.2%、「外食」64.6%、「通信販売業」81,3%など、媒体で割合が高いのは「インターネット」72.4%、「店頭」86.1%、「チラシ」85.6%、「折込」87.1%などである。
(2)表現が占める割合が高い業種は、「デジタルコンテンツ等」42.2%、「出版物等」52.9%、「飲料・嗜好品」57.0%など、媒体別では「テレビ」60.7%、「ラジオ」52.0%が多い。
(3)手法については、業種では「デジタルコンテンツ等」11.3%、「インターネット関連」10.6%など、媒体別では「テレビ」10.1%、「ラジオ」12.9%などが多く、「CMの音が大きすぎる」「高速で点滅するバナー広告は短時間でも目が痛くなる」といった意見が寄せられた。
年代別(年代不明を除く)で見ると、(1)表示は購入・契約が最も活発な40代・50代で高く、10代と70代に向けて低減する山型となる。(2)表現については、逆に若年層と高齢層が高く40代が底となる谷型を示す。特に10代では広告表現が過半数を占める(58.7%)。(3)手法は10代~30代が他の年代より若干高い。

苦情内容別件数 表示2433件、表現1664件、手法404件 計4501件

「見解」21件を発信、うち17件が媒体「インターネット」

業務委員会で審議し「見解」を発信したのは21件で、内訳は警告19件(前年同期14件)、要望1件(同1件)、提言1件(同2件)だった。業種「健康食品」、媒体「インターネット」が多数を占め、「健康食品」は前年同期4件から今期12件、媒体「インターネット」は14件から17件と増加した。「インターネット」については近年、アフィリエイトサイト(※5)が関わる事例が目立っており、今期はこうしたものが「インターネット」17件中13件を占めた。入り口となるのはニュースサイトやSNSなどのインフィード広告で、そこからアフィリエイトサイトに飛び、「購入はこちら」などといったボタンから公式通販サイトへ誘導するパターンが多く、こうした事例は今期9件あり、いずれも法違反のおそれがある「警告」と判断された。

※5 広告主がASPを通さずにアフィリエイター等と直接契約しているものも含まれる。

2019年度上半期の警告一覧 ( )内は媒体
(1)ニュースアプリのインフィード広告で、着用するだけで脚が短期間で劇的に細くなるような表現をした加圧レギンス(インターネット〈バナー、アフィリエイトサイト、自社通販サイト〉)
(2)糖尿病に効果があるかのようなナレーションや体験談をうたったサプリメント(テレビ)
(3)「1週間で10kg以上体重が減少したら使用を控えてください」など劇的な痩身効果があるかのように標ぼうしたサプリメント(インターネット〈メールマガジン、自社通販サイト〉)
(4)「食べたことがなかったことに」とうたい、ラーメンと当該商品をミキサーにかけると透明な水に変化する動画を表示したサプリメント(インターネット〈SNSインフィード動画、アフィリエイトサイト、自社通販サイト〉)
(5)食べても太れなくなるとの文言や1カ月で10kg痩せたとする体験談などを表示したサプリメント(インターネット〈アフィリエイトサイト〉)
(6)食べても太れない衝撃的なダイエットなどとうたったサプリメント(インターネット〈アフィリエイトサイト〉)
(7)麹がダイエットに著しい効果があるかのようにうたったサプリメント(インターネット〈アフィリエイトサイト〉)
(8)タレントがテレビ番組で絶賛したとうたう化粧品の美容液(インターネット〈アフィリエイトサイト〉)
(9)「30日間解約保証」と表示されていたが、実際は4回の定期購入契約で解約できなかったサプリメント(インターネット〈ニュースアプリのインフィード広告、アフィリエイトサイト、自社通販サイト〉)
(10)抗酸化力などの効能や世界特許製法などとうたったケイ素を含んだ飲料(インターネット〈自社通販サイト〉)
(11)麹が脂肪の原因を分解するなどとうたったサプリメント(インターネット〈SNSインフィード、アフィリエイトサイト、自社通販サイト〉)
(12)塗るだけでシミが消える、厚生労働省認可などとうたった医薬部外品のクリーム(インターネット〈ニュースサイトインフィード、アフィリエイトサイト、自社通販サイト〉)
(13)比較サイト1位の商品が販売サイトでデブ菌やヤセ菌などとうたっていたサプリメント(インターネット〈ニュースサイトバナー、アフィリエイトサイト、自社通販サイト〉)
(14)上記(13)の同事例でアフィリエイター宛のもの(インターネット〈ニュースサイトバナー、アフィリエイトサイト〉)
(15)全身脱毛月々○○円と表示し総額を誤認させる医療機関(テレビ)
(16)医療機器でないにもかかわらず病原菌名を表示していた空気清浄機(パンフレット)
(17)塗るだけで歯が白くなるかのようにうたった歯磨き用ジェル(インターネット〈ニュースサイトバナー、アフィリエイトサイト、自社通販サイト〉)
(18)解約保証付きとうたいながら解約できない定期購入のサプリメント(インターネット〈自社通販サイト〉)
(19)ほぼ全員髪が生える、厚生労働省が認可などとうたった医薬部外品の育毛剤(インターネット〈掲示板アプリインフィード、アフィリエイトサイト、自社通販サイト〉)

[警告]広告および表示事項が関係法令に抵触することから、当該広告の即時排除もしくは当該表示の撤回が必要と認められるもの。
[要望]広告および表示事項が消費者に誤認を与えるおそれのあるもの、または関係法令に抵触するおそれがあり、当該表示の修正を求めることが必要と認められるもの。
[提言]広告および表示事項の一部が消費者に誤認を与えるおそれがあるため、検討を求めることが必要と認められるもの。

2019年度上半期のトピックス

●アフィリエイトサイトが関わる問題事例

アフィリエイトサイトが関わる事例では、広告主以外にアフィリエイター、ASP(アフィリエイトサービスプロバイダー)、広告会社など複数の事業者(または個人)が関わるものが多い。今期はアフィリエイトサイト(前述※5参照)が絡む事例13件に「警告」を発信したが、広告制作会社や広告会社が共通する事例があった。上記警告(5)~(8)の4事例は多くの問題表示を含んだアフィリエイトサイトが関わるが、すべて広告制作会社A社、広告会社B社が共通して関与しており、また別の2件(11)(19)については、どちらもASPが同じだった。
原則としてJAROが見解を発信するのは広告主だが、内容によっては関与者にも書面で適正化を要請しており、上記のような問題表示を繰り返している広告会社等に対しても強く表示の適正化を働きかけていく。

●定期購入契約が急増、健康食品と化粧品で7割占める

定期購入契約に関する苦情は、2015年度15件、2016年44件、2017年95件、2018年度98件と増加傾向にあったが、今期は上半期の段階で既に127件寄せられている。
127件の対象商品を見ると、健康食品や化粧品が多く、この2つで全体の7割を占める。今年度になって医薬部外品も増加した。入り口となる広告などの表示は「モニター」「お試し」などであり、JAROに寄せられた苦情では、「定期購入だと分かりにくい」、返金保証と表示されているが、「電話をしたら解約に条件があることが分かった」「電話がつながらない」などがある。
前述の「警告」19件のうち13件(※6)は定期購入契約の事例である。「解約保証」「完全無料」などと書かれているが、解約できるのは4回分を購入した後であったり、無料になるのは初回だけであるなど、誤認させる表示を行っていた。
※6 (2)(5)(6)(7)(8)(9)(11)(12)(13)(14)(17)(18)(19)

定期購入契約の対象商品 健康食品76件、化粧品27件、医薬部外品12件、石けん・洗剤4件、医薬品3件、その他5件

●インターネット上の問題表示への対応が課題

媒体「インターネット」については、いわゆるフェイク広告を含め、広告・表示規制に違反する広告・表示への苦情が急増している。JARO業務委員会で審議した「見解」は、「インターネット」の問題事例が多くを占めており、従来の対応方法をより厳格化することに加え、会員企業や関係団体などと連携して適正化への取り組みも進めたいと考えている。
今期進めた取り組みもある。1つは今年7月に実施した「JAROオンラインご意見箱」のリニューアルである。これは広告・表示への苦情を受け付ける送信フォームで、問題広告の通報機能を強化するとともに、名称も「広告みんなの声」と改めた。JARO事務局で広告が確認できないと審査プロセスに乗せられないが、特にインターネット広告はユーザーの属性や閲覧履歴などに基づいて個別に配信されるため、苦情申立者が見た広告が事務局のデバイスにも表示されるとは限らず、画面のスクリーンショットの有無がその後の処理に影響する。そのため、送信フォームでの苦情送信時にファイルサイズの大きい画像も添付できるよう、添付画像数と容量を拡大した。このリニューアルもあり、「オンライン」件数が月平均100件増加することにつながったと思われる。